古典ノススメ 書評

【古典ノススメ】夜叉ヶ池(泉鏡花)幻想の戯曲短編

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泉鏡花夜叉ヶ池""

こんにちは岩田タクです。

今回は【古典ノススメ】シリーズ。大好評??の泉鏡花の作品です。



ポイント1:これは本当に読みやすい

 

読みにくいことが特徴の【古典ノススメ】シリーズ。

とはいえ、旧仮名遣いの度合いによっては、それをして「読みやすい」と紹介した作品もいくつかありました。

今回の「夜叉ヶ池」も仮名遣い的には読みやすい部類です。

 

そして今回はそれに加えてもう一つ読みやすい理由があります。

それは、この作品は「小説ではない」ということです。

じゃあいったい何なのかと言えば、これは「戯曲台本」なのです。

戯曲台本とはこんな感じの物です。

泉鏡花夜叉ヶ池""

 

基本的には登場人物の名前と、その人物が言う台詞という構造でできています。

それに加えて、登場人物たちの動きを書いた地の文が少し入っています。

どの台詞を誰が言ったのかが明確で、文章の中から考えることはありません。

 

さらに情景描写も最低限にとどめられているため、「物語を追っていく」ことのストレスはかなり排除されています。

「絵のない漫画」みたいな感じでしょうか?

ページ数で言えば74ページ(岩波文庫)ですが、読んでいるとあっという間です。

読みやすさだけで言えば今までに紹介した古典の中では随一かと思います。

ポイント2:読みやすくても鏡花の味はしっかり出ている

 

これまでの泉鏡花の紹介の中では「文章から想像する景色が最高に美しい」と言ってきました。

普通に考えるとその効果は情景描写の地の文に由来しますよね。

でも先ほども書いたとおり、「戯曲台本」という性格上、分量としては登場人物の台詞がメインで、地の文はかなり少なくなっています。

そんななかで鏡花の作風は味わえるのか?

 

結論:味わえる!

 

どういうことかと言えば、地の文がなくても物語の状況と登場人物の台詞から十分にその景色が想像できます。

そしてそれがとても美しい。

『きっとこの台詞を言っているときのこの人物の表情はとても切ないんだろうな』というのが「戯曲台本」からでも十分に伝わってきます。

台詞のみでここまで読者に想像をかき立てる巨匠の技にしばし埋もれてみてはいかがでしょう?

 

ポイント3:鏡花お得意の幻想物語

 

この物語にも前回の「高野聖」と同じく妖怪が出てきます。

幻想物語となります。

それに加えて「外科室」で紹介したような恋物語の要素も入っています。

鏡花お得意の幻想ワールドだけで無く、あのどこか寂しく、そしてすがすがしい古風な恋物語も同時に楽しめる作品になっています。

 

「古風な恋物語」も「幻想」も人によっては嫌いな方もいるでしょう。

そのような方に対しては「合わない」というほかありません。

「夜叉ヶ池」はそういう作品で、泉鏡花はそういう作風なのです。

 

逆に好きな人からすれば、とてもおいしい思いができる作品になっていると思います。

いままで読んだことがないという人、「夜叉ヶ池」っ面白いのかな?と思っていた人。

そんな方々の参考になれば幸いです。

まとめ

 

「夜叉ヶ池」は個人的にも大好きな作品です。

実は初めのうちは旧仮名遣いのこの本をあんまり読もうとは思いませんでした。

でも、旧仮名遣いだろうが、現代語だろうが同じ日本語として通じる物があることが分かりました。

文学って面白いですね。

 

私も下手な小説を書いていますが、特に「幻想」という分野においては泉鏡花に強く影響されました。

特に創作をやっている方は昔の作品も読んでみると良いかもしれません(私が言うまでも無いと思いますが・・・)。

読まず嫌いはもったいない!

 

 

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